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ホーム > お知らせ > 【ゆるっと薬剤師コラム】Vol.10 抗菌薬と耐性菌

【ゆるっと薬剤師コラム】Vol.10 抗菌薬と耐性菌


▼ こちらからもご覧ください ▼

11月6日・7日に日本慢性期医療学会という学会に、私は「座長」という役割で参加してきました。
学会というと少し堅苦しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと「慢性期の医療を、どうすればもっと良くできるか」を、全国の医療スタッフが持ち寄って話し合う大きな勉強会のような場です。
今回、私が座長を担当したセッションは「薬剤」についてで、6つの病院からの演題が発表され、どれも素晴らしい内容でした。

ところで、学会では様々なカテゴリーの演題が発表されるのですが、私が特に注目したのは、
  • 薬の使い方(ポリファーマシー、のみ合わせ、副作用 など)
  • 医療安全(ヒヤリ・ハットや医療事故をなくす工夫)
  • 身体拘束を減らす取り組み(ベッドに固定するベルトなどをできる限り使わない工夫)
といったテーマの発表です。

1. 「薬の数」より大事なこと

発表の中で繰り返し出てきたキーワードが「ポリファーマシー」です。
これは「薬の数が多すぎること」と説明されることが多いのですが、実際には「患者さんの生活や体の状態に合っていない薬の組み合わせ」と考えた方が近いかもしれません。
たとえば、
  • 眠れるようにと眠剤が増えた結果、ふらつきが強くなり転倒してしまう
  • 胃薬や便秘薬など、“副作用の副作用”に対する薬がどんどん増えていく

こういった「悪循環」をいかに見つけて、薬を整理していくかが大きな課題です。
学会では「薬を減らすこと」が目的なのではなく、
“その人らしく、できるだけ元気に暮らせるかどうか” を中心に考えることが大切だと、さまざまな演題から改めて感じました。

2. 医療安全は「特別なこと」ではなく「毎日の小さな工夫」

医療安全の演題では、「大きな事故」だけでなく、その手前の「ヒヤリとした経験」をチームで共有し、仕組みとして生かしていく取り組みが紹介されていました。
  • 薬の取り違えを防ぐための表示の工夫
  • 点滴のスピード設定をダブルチェックする仕組み
  • 忙しい時間帯にミスが増えないような業務の見直し

どれも“派手な対策”ではありませんが、こうした地道な改善の積み重ねが、「安全に薬を使うことを裏側で支えているのだと、改めて強く思いました。

3. 身体拘束を減らすことは「安心をあきらめること」ではない

身体拘束(手足や体をベッドに固定すること)は、転倒やチューブ抜去を防ぐために行われることがありますが、
  • 強い不安や混乱を招く
  • 筋力低下や認知機能の低下につながる
といった大きなデメリットもあります。
学会では、
  • 薬の見直しで夜間の混乱を減らす
  • 痛みや不快感(トイレ、便秘、口渇など)をきちんと評価してケアする
  • ベッド周りの環境を整え、スタッフが声かけを工夫する
といった、「身体拘束に頼らずに安全を守る」ための取り組みがいくつも紹介されていました。
薬剤師としては、眠剤・抗不安薬・抗精神病薬などの量や組み合わせが、かえってせん妄や不穏を悪化させていないかを確認し、チームに提案することが重要だと再認識しました。

4. 学会で感じたことを、病院の日常にどう生かすか

座長として演者の先生方の発表をうかがいながら感じたのは、
薬・医療安全・身体拘束抑制というテーマは、どれもバラバラのようでいて、実は一本の線でつながっているということです。
その線とは、
患者さんとご家族が、できるだけ安心して、その人らしく暮らせるようにする
という、医療の一番大切な目的です。
  • 薬を減らすこと
  • ミスを減らすこと
  • 身体拘束を減らすこと
どれも「我慢大会」ではなく、
チームで知恵を出し合い、仕組みを変えていくことで実現していくものだと、改めて強く感じました。

5. 最後に、皆さまへ

私たち薬剤科は、
「薬を正しく出す」だけでなく、
本当にその薬が、その人のためになっているか」を考え続ける役割を担っています。
もし、
  • 「薬の数が多くて不安」
  • 「最近なんとなくふらふらする」
  • 「眠剤や安定剤をずっと飲み続けていて心配」
といったお悩みがあれば、外来でも入院中でも、遠慮なく薬剤師に声をかけてください。
今回の学会で得た学びを生かしながら、医師や看護師、リハビリスタッフなど多職種と一緒に、みなさん一人ひとりに合った“安全で、負担の少ない薬の使い方”をこれからも考えていきたいと思います。
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